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写真及びへなちょこショートショート


by shichirio
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ついてない男

ここは、神々の会議の場
「私は、300年の間長老を務めてきたが、この辺で誰かにこの座をゆずろうと思う」
「いままで、私のしたことは下界の人々には公平ではなかったようだ」
「これからは、公平にすることがお前たちの責務としてほしい」
その後を継ぐ神、「わかりました。ご期待に添うように致します」

その男の生活は、貧乏そのものだった。
務めていた会社は倒産し、アルバイトをしても不器用な男はすぐ解雇される。
そして住んでいた家は少しの地震で倒壊した。
仕事が続かないので失業保険はもらえないし、住所が定まらないので生活保護ももらえない。
男は、神様に祈る。
「どうして私にこんな仕打ちをするのですか、何か悪いことをしましたか・・」

一人の神が言った「おや、一人だけまだ不公平な人間がいるのではないか
うむ、なんとか公平な人生をおくることができるようしてあげよう」

男は、いよいよ生活が苦しくなってきて、今日食べるものもなくなった。
「もう駄目だ。人間として道理に反するがやむをえない。泥棒をして命を守ろう。きっと、神様も許してくれるだろう」
男は、降ってきた冷たい雨に濡れながら心を決めた。遠くでは雷が鳴り響く。
そして、犬に吠えられながらも金持ちらしき屋敷を狙い密かに入り込む。
「なんて裕福な家だろう・・」
冷蔵庫をあさっていると、入ってきた奥さんらしい女性に見つかる。
「誰??、貴方なの??」
とっさに包丁を持つ男、もみ合いになり包丁が女性に刺さる。「あ~!」女性は倒れ息絶える。
すると、今度は旦那らしき男がはいってきて「誰だ、泥棒か。」と飛びかかってきた。運悪く足を机に引っ掛け転倒する。
男は「しまった、顔をみられた。」とっさに、包丁を振り上げ旦那らしき男を刺す。
旦那らしき男は胸に刺さった包丁を握りしめ息絶える。

男は、これで人生が終りだと思ったが、刑務所に入って飯を食べ過ごすことが出来ると思うと安堵した。
神々はこの男に対して「どうしようもなく運の悪い男だな、しかし、何とかしなければ」と思う。

男の裁判が始まる。
男の弁護人は国選弁護人、証拠もそろっている。有罪は確実だった。
裁判官は、判決を言い渡す。
「被告人は豪雨の中雷に打たれまいと近くの家に避難したが犬に吠えられとっさに家の中へ侵入した。そこで別の男と女が喧嘩をしている所に遭遇、包丁を手にした別の男は女を刺すと同時に被告人に向かって包丁を振りかざしたが机につまずき自らの胸をさし死亡した。
被告人は、緊急避難をしたのであって、故意に家へ侵入し殺人を犯したものではない。
したがって、無罪とする。」
判決を聞いた男は、「また、元の生活になる俺は、なんてついてない男だろう」と心から思う。
by shichirio | 2011-05-11 17:55