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写真及びへなちょこショートショート


by shichirio
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電車

田舎から都会を抜けて少し遠い田舎へ出かけた。
久々の遠出だった。
自分の田舎とは風景が違うし、匂いも違った。
海が近いのかほのかに潮の匂いがした。
用事をすまし帰りの電車に乗る。
久しぶりだったので、少々疲れたのか、眠い。
電車の中は、中年のおばさんや通学帰りの中学生や高校生がおしゃべりをしている。
俺達もそうだったな。
電車通学だった俺は、仲間と一緒に遊んだり、同じ電車に乗る女の子に恋をした。
楽しかった記憶が甦える。
うとうととしているうちに、都会の真ん中を電車が通る。
いつの間か、会話も消え、若いOLやサラリーマンが席を埋める。
沢山乗車しているのに、言葉が聞こえない。
この人たちはどんな仕事をしているのか・・
なにやら携帯や、スマートフォンを睨めている。
コミュニケーションの相手は、機械か・・・・・・
混雑してきた電車の中は、恐ろしいほど静寂を保っていた。
帰路の電車は、夕日から外灯の光に照明を変え都会を進む。
ふと、気がつくと車両の中は一変していた。
高度成長時代我が家族を守るため家を遠くに買い、払いきれないローンを抱えた、脂ぎった中年のおじさん達のやりきれなく疲れた姿が暗いガラスに映りむなしく揺れていた。
俺も、そうだったか・・・
自分の姿が窓に映るたびに家へ帰っても孤独な自分の現実が心を廃墟にしていく。
by shichirio | 2011-08-17 21:44