写真及びへなちょこショートショート


by shichirio
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通勤電車

俺には恋こがれている人がいた。
いつも俺の席の向かい側に座る。
その顔をついじいっと見入ってしまい、まるで吸い込まれる感じがして胸が熱くなるのだ。
都会から離れている田舎からの通勤のため、朝一番に電車に乗る。
途中、どうしても眠くなる。
どの駅から乗り込むのか分からないし降りる駅も一つ前の駅なので声をか掛けることができないのだ。
しかし、今日もまた、同じ席に顔ののっぺりしたいわゆるブスが座る。
「ちぇっ、また、こいつがそこに座ったのか」
「あ~、お前なんか早く降りろ・・」
心からそう思う
眠いのと同時に見たくない女が目の前にいる。自然に瞼が閉じ、電車の心地よい揺れで眠りに入るのだ。そして、目がさめればそこの席にはあの憧れた人と入れ替わっているのだ。

ある日、俺はいつもと同じ席に座った。
さらに、いつもと同じようにブスが目の前に座る。
いつもはすぐ眠くなるのだが、久々の長期休暇の後だったので、あまり眠くならない。
「くそっ、お前なんか早く降りろ・・」心でそう思った。
「あ~、鏡なんか出しやがって・・」
「化粧品を出したな。ファンデーションか・・、電車で化粧なんかするんじゃないよ」
「もう・・、頬紅なんか塗って・・ ブスはブスなりに抵抗しないほうがいいよ」
「付けまつげか、まったくほかの人に迷惑だな」
女は、次々と化粧にとりかかる。
「まったく・・・・・・」
俺は、眠くなったが、あの人が乗る時を心待ちにしていた。
「そうか、こいつが降りなければ、あの人がそこに座ることができない」
俺は、周りを見回した。
「いないな・・・・」
「今日は、休みか・・心が沈んだ。」
ふと、前に目をやると化粧がやっと終わり、最後の口紅をつけている女がいる。
「えっつ・・・・・」
そこには、恋こがれている彼女がいた。
目を疑った。俺は、現実とは思えない状況で呆然と放心状態が続いた。
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by shichirio | 2011-08-30 22:25